文法訳読法 (The Grammar-Translation Method)

今回からはSLAの教授法について紹介したいと思います。様々なメソッドがありますが、どれが一番いいという訳ではなく、学習者・教育機関のニーズや、先生方ご自身が授業を通して学習者にどのような能力を身につけてほしいのかによって柔軟に取り入れていくことが一番大切なのかな、と思っています。

 

参考文献はDaiane Larson-Freeman and Marti Anderson. (2018) Techniques & Principles in Language Teaching です。

 

第一回目は文法訳読法 (The Grammar-Translation Method)についてまとめていきます。リーディング教材をもとに文法・語彙の知識を学び、第一言語第二言語を訳すことを重視する教授法です。

 

では、文法訳読法にはどのような特徴や目的があるのでしょうか?

 

1. 目的 

- 英語の文学や文献を読んで理解できること。この目的を達成するために文法や単語を暗記する必要がある。4技能の中では読み書きが重視され、スピーキング・リスニング・発音などを学ぶ機会は限られている。

 

2. 教員と生徒の関係性

- 決まった正しい答えを教える権威的な存在。教員から生徒への一方通行的なコミュニケーションが多く、生徒間の双方向的なコミュニケーションはあまり見られない。また、教室内での会話は日本語がほとんどを占めている。

 

3. 教え方の特徴

- 文法や単語といったルールを説明したのち、それらの知識を応用してリーディング教材の内容を正しく理解しているか、文章を日本語に置き換えることができるか、といった視点で生徒の理解度を評価する。

 

具体的な授業の流れとしては、

新出単語の意味を日本語で覚えて、英語の文章を読み、その中で使われている文法を確認しながら、最終的には英語を日本語に訳すことができたらOK!

といった教え方になります。

 

英語教育といえばこうしたイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。少なくとも私が中学校・高校で受けた頃の英語の授業といえば全部こんな感じでした。予習ではほぼ全ての単語を電子辞書を引きながら和訳して、授業中は一文ずつ当てられて正しい日本語訳を確認し、テスト前には和訳を丸暗記する・・・これが英語の勉強だと信じて疑いませんでした。授業中に先生のカタカナ発音に続いて教科書を音読することはあっても、ペアワークやグループワークでクラスメイトと英語で意見交換をする、なんていうことは皆無でした。

 

文法訳読法はラテン語など古典を読み解くために発展してきた教授法なので、コミュニケーションを取ることがそもそも前提とされていないのも頷けます。カトリックの神父さまなどをのぞいて、ラテン語を日常で使っている人はいませんからね。実用性よりも教養として身に着けるものという認識が強かったのかな、と思います。

 

日本の英語教育に文法訳読法がハマった理由としては、ペーパー試験では文法・文章読解などの方が評価しやすい(採点基準を決めやすい)、教員自身の言語運用能力がなくても教えられる、日常で英語を使う必要性がないためラテン語同様「教養」として扱われた・・・などが要因ではないかなと考えています。(完全に私見です。)

 

近年になってようやく見直しが進み、よりコミュニカティブな教え方が主流になりつつありますが、SLAでは文法訳読法は化石、コミュニカティブ・アプローチも80年代くらいに流行ったひと昔前の教授法という印象です。はじめてこの事実を知った時、日本での英語教育そこまで遅れているのか・・・と愕然としました。古いから悪いというわけではないですが、流石にね。40年も違うと、みんなSwitchやってるのに最近初代ファミコン始めました、ぐらいの時代の隔たりがありますからね。

 

次回は直接法(The Direct Method)について紹介したいと思います。

 

お わ り

第二言語習得理論について

大学院ではTESL(英語教授法)専攻ですが、最近は第二言語習得理論(Second Language Acquisition/ SLA)が特に面白いな、と思っています。

 

第二言語習得はシンプルにいうと「どうやったら外国語ができるようになるの?」という疑問に答えるための学問分野で、言語学・教育学・心理学・社会学認知心理学 etc. が混在している感じです。教授法(メソッド)も文法訳読法、直接法、オーディオリンガルなどなど、こちらも流行り廃りによって色々ありますね。最近のトレンドは機械学習(ITとか)だそうで、時代に合わせて教育のニーズを満たすために常に進化しているといえます。まあどの分野もそうですが。

 

そもそも「外国語ができる」とはどのような状態を指すのでしょうか。言語というのは文法、音声、意味、文化、第一言語の影響などが複雑に絡み合っており、定義は非常に多岐に渡ります。

 

例えば、義務教育で英語を6年間も勉強しているのに日本人は英語を話せないとか、試験では高得点でも実際のコミュニケーションは苦手、といったケースをよく聞きます。果たしてこういう人たちは「外国語ができる」と言えるのか...というと、首を縦にふる方は少ないのではないでしょうか。したがって、私たちがイメージする「外国語ができる」状態とは、文法や単語の知識だけでなく、様々な場面に合わせて適切にコミュニケーションを取るために言語を運用できる能力と言い換えるとしっくりくるのではないかなと思います。

 

では、そうした能力を伸ばすためにどんな教え方をしたらいいのか?ということも気になります。私も平均的日本人として中学校で英語を勉強しはじめ、その後教員として高校で英語を教えたりしていましたが、スピーキングやリスニングを教える時ぶっちゃけ自分の教え方に自信を持てなかった。

 

というのも(今は宙に浮いてしまっていますが)数年前はセンター試験廃止後はスピーキングが採点対象になるということで、英語教師としてこの先やっていけるか非常に危機感を持っていたわけです。そんな中で理論的なバックグラウンドがなく、自分自身の学習経験しか引き出しがない状態は厳しいなと思い、もっとちゃんと第二言語を習得する過程や効果的な教え方について知りたい!!と思ったのが留学を志すきっかけになりました。

 

では実際に留学から一年経ってみてどうかというと、まだまだ第二言語習得については勉強する余地がたくさんあるな〜と感じています。(つまりよく分かっていない)日本では高校で英語を教え、現在アメリカで日本語を教えている・・・というように、振り返ると常に外国語を教えることを飯の種にしてきたわけですが、この二つの言語教育において共通する分野としてますます第二言語習得理論(SLA)って面白いな〜〜と興味が尽きないわけです。

 

現状、専攻がTESLにも関わらずネイティブスピーカーではない私がここアメリカでESLを教えられる機会を探すことが難しく、情けない話ですが自分の語学力では上級者レベルを教えられないのです。さらにコロナの影響で、本来Teaching practicumのためにやるはずだった地元の方向けのESLボランティアが開講されず八方塞がりの状態。(っていうか私は卒業要件を満たせるのか・・・?)

 

それとは逆に、TAとして日本語の授業を担当しているので日本語教育の方が必然的に関わる機会が多く、「あれ、私って日本語専攻だったっけ?」みたいな感じで自分を見失いかけています。たぶん教授によっては私がTESL専攻っていうこと忘れている気がする。日本語のクラスを取っている学習者さんたちはアニメやゲームなど日本が文化好きで授業を取っている人が多いので、モチベーションが高く本当に教えていて楽しい。それまで当たり前に思っていた日本語・日本文化を全く異なる視点から見ることができるのも新鮮です。

 

何より、ネイティブスピーカーとして自分自身に蓄積されている言語・文化の知識がそのままリソースとして使えるのが大きく異なります。自分の英語信用ならないし・・・。しかし面白いことに文法説明などを説明するのは英語の方が簡単に感じる。日本の英語教育の賜物ですね。

 

現在は自己啓発休業中のため基本的には日本に帰国して勤務校に戻る予定なのですが、自分の興味が移ってきたこともあり、MA取得後は日本語方面で就職またはphDを目指すのもいいなあ・・・とか妄想したりしながらYouTubeにうつつを抜かしている今日この頃。

 

明日からはSLA理論について記事をちまちま書いていこうかな、と思います。自分の備忘録も兼ねて。

 

お わ り

 

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お ま け

*TA = ティーチングアシスタント

- 大学院生が学部生向けの授業の担当・補助をすることで、学費や保険料の免除+給与をもらうことができる制度のことです。詳しくは別記事で書きます。

 

 

 

 

 

 

Prince Caspian

Prince Caspianを読み終えました。

 

ナルニア国物語シリーズで最初に刊行された『ライオンと魔女』で活躍したペベンシー兄妹が再びナルニアに戻ります。彼らの世界ではほんの一年が経過しただけですが、時の流れが異なるナルニアでは数世紀あるいは数十世紀経っており景色もさまがわりしてしまっています。テルマール人の支配するナルニアでは、ものいうけものたちは人間たちに見つからないように暮らしており、森や木の精たちは深い眠りについています。

 

ペベンシー兄妹たちは、叔父に王位を簒奪され命を狙われているカスピアン王子に魔法の力で呼び出され、ものいうけものたちとともにかつてのナルニアを取り戻す・・・というのがザックリとしたあらすじです。

 

C.S.ルイスが敬虔なクリスチャンであることもあり、シリーズ全体を通して聖書を下敷きにしたエピソードが出てくるのも特徴的です。私もアメリカに来てから時々バイブルスタディに参加する機会があり、昔何も知らずに読んだ時よりも「あれ、これはキリスト教の教えに関係しているのかな?」というアンテナを立てながら物語を楽しむことができた印象を受けました。

 

私は個人的にクリスチャン的視点から物語の解釈を知りたいな、と思ったので、こちらの日本キリスト教団富山鹿島町教会さまのホームページが大変参考になりました。(トップページ>エトセトラ>「ナルニア国物語について」 より閲覧可能です。)

http://w2322.nsk.ne.jp/~tkchurch/index.html

詳細なあらすじも解説に含まれているため、自分が英語で読んでいるときに情景描写などがよく分からず物語が追えなかった時にもとても助かりました。笑

 

もちろんこれらの知識がなくても、王位をかけた戦いにドキドキしたり、個性的なキャラクターたちのやりとりにくすりとさせられたり・・・と充分物語を楽しむことができるのがナルニア国物語シリーズの魅力ですね。

 

今回読んだPrince Caspianは『カスピアン王子のつのぶえ』と題されており、シリーズの2作目に当たりますが、アメリカでは面白いことに4作目 として扱われています。

 

これは日本版では発表順が重視されたのに対して、アメリカ版では物語世界における時系列順を採用しているためだそうです。このことも関係してか、アメリカ版は本シリーズをThe Chronicles of Narnia (直訳でナルニア年代記)と表現しています。

 

ちなみに日本版では

  1. ライオンと魔女(1950年)
  2. カスピアン王子のつのぶえ(1951年)
  3. 朝びらき丸 東の海へ(1952年)
  4. 銀のいす(1953年)
  5. 馬と少年(1954年)
  6. 魔術師のおい(1955年)
  7. さいごの戦い(1956年)

アメリカ版では

  1. 魔術師のおい
  2. ライオンと魔女
  3. 馬と少年
  4. カスピアン王子のつのぶえ
  5. 朝びらき丸 東の海へ
  6. 銀のいす
  7. さいごの戦い

という順番になるので、結構違いますね。(Wikipediaより引用)

 

ちなみに私はナルニア創生のネタバレを数多く含むという『魔術師のおい』は一旦とばして、『ライオンと魔女』→『馬と少年』→『カスピアン王子のつのぶえ』まで読み進めました。『馬と少年』については外伝的な要素が強く途中で読んでも支障がないだろうと判断し、すでに日本版で読んだことのある『ライオン...』と『カスピアン王子...』のチェイサー的な感じで読んでみました。次からは日本版に準拠しつつちびちび読んでいこうかな〜と思っています。

 

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Vocabulary

- headscratching (n):頭をかきむしるぐらい困惑している状態

- blaze (v): 炎が上がる

- rule the roost: 家庭などを牛耳る(英語だとroost:鶏小屋なのが面白い表現)

- chink (n): 細い裂け目、比喩的に法などの抜け道

- chasm (n): 岩場などの深く広い裂け目、比喩的に意見の大きな隔たり・相違

- pull oneself together: 自分を取り戻して冷静になる、しっかりする

- nuisance (n):不快なこと、厄介なこと

- torch (n): たいまつ、懐中電灯

 

文章のレベル・量は児童書なのでさほど難しくないのです。ただし王様や騎士が出てくる物語なので、ところどころ言い回しが古めかしく、少なくとも自分にとっては見慣れない単語や表現が多くて苦労しました。

また、Faun やDryad など神話由来のキャラクターも多く登場するので、背景知識がないと「誰?」みたいな感じになったり、突然魔法で登場人物の姿形が変わったりするんですが語彙力の乏しさのために想像力がついていかなくなることが多々ありました。あとは場面転換を伴う情景描写が長く続くと、どこで誰が何をしているのか見失ったりと、英語の読解力がまだまだだな〜〜ということを思い知らされました。

とはいえ、やはり英語で一冊読みきる達成感はなかなか良いものです。次のThe Voyage of the Dawn Treader も楽しみです。

 

お わ り

はじめまして

フライドチキンで有名な某南部州でひっそりと社会的距離を保ちながら生きている大学院生のiammamiです。

 

COVID-19のロックダウンから早3ヶ月以上が過ぎ、レストランや公共施設が徐々に開いてきました。でも小心者なので思いっきり外に出るのもなんだかなぁ・・・ということで日々引きこもって過ごしています。

 

(とか言いつつ昨日はルームメイトとアイスクリーム屋さんに行ってめちゃくちゃテンション上がった)

 

本来ならば日本に一時帰国してsushiをキメているはずだったのですが、地元の空港が国際便全便欠航になってしまいあえなくキャンセル。現状では帰国者の2週間隔離必須+公共交通機関使用ができないということで約3ヶ月の夏休みをどう過ごそうか途方に暮れている。

 

週3でサマーコースがあるもののあまりにもやることがないので、ふとブログでもはじめてみようかなと思い立った次第です。

 

留学前、現在の留学生活、英語できないなりに思うこと、アメリカでの生活についてなどなど書いていこうと思います。

 

お わ り